長い闘病生活の末亡くなった場合など、家族はできるだけ故人が元気な頃の姿で旅立たせてあげたいと考えるものであり、故人の尊厳を守るためにも見た目のケアは必要です。
その際に外見などをきれいに整える処置を行う役割を担うのが看護師であり、エンゼルケアと呼ばれる方法です。

エンゼルケアは、全身のケア、体の冷却、顔のメイク、お見送りといった流れで行うのが一般的です。まず全身のケアでは、体につけていた医療器材の取り外しから始め、排泄物の処理、口腔や眼内のケア、全身清拭などを行います。特に、死後硬直の始まりが顎であるため、口腔ケアはできるだけ迅速に行う必要があるでしょう。次に体の冷却ですが、これは腐敗を防ぐためにも必須であり、胃や腸、肺の部分を中心に冷やします。葬儀社も冷却は行うのですが、看護師はそのつなぎとして実施することになります。

顔のケアは、顔そりやクレンジングクリームを使ったマッサージ、ファンデーションやアイメイク、リップといったメイクを行います。この際、家族に声をかけて希望や意見を聞きながら行うと、故人の元気な頃の面影により近づけることができるでしょう。メイクは事前に看護師同士で練習しておくと本番もスムーズです。

最後にお見送りになりますが、ここでは霊安室での待機やお見送りの他に、近年では抱きうつしといったものもあります。これは、ベッドからストレッチャーに移す時に、家族にも抱きかかえてもらうといったもので、故人が家族に抱きかかえられる最後の機会という意義のあるものです。
そしていよいよ病院を去る時は、主治医と看護師で厳正な態度で一礼し、車が見えなくなるまで最後のお別れをきちんと行います。